3基準は制度の目的が違う
自賠責基準は被害者保護の最低ラインを確保するための基準で、迅速性と公平性を優先しています。任意保険基準は保険会社実務での標準的な解決ラインとして運用され、案件ごとの事情を一定程度織り込みます。弁護士基準は裁判例の蓄積に基づく評価水準で、法的に争った場合の到達点に近い考え方です。
重要なのは、どの基準が『正しい』かではなく、案件の解決フェーズに応じて使われる基準が異なるという点です。事故直後の仮払いや早期清算では自賠責・任意保険ベース、紛争化した局面や訴訟視野では弁護士基準が参照されやすくなります。
金額差の背景を理解する
同じ通院4か月・実通院45日でも、自賠責基準と弁護士基準では差が出ることがあります。自賠責は定型式で予見可能性が高い一方、弁護士基準は症状経過や資料の整合性を踏まえて評価されるため、立証の質が反映されやすい構造です。任意保険基準はその中間に位置することが多く、実務ではまず任意保険ベース提示が行われる傾向があります。
ただし、弁護士基準が常に最大になるわけではありません。通院頻度が低い、症状説明が一貫しない、他原因の影響が強い等の事情があると、期待額に届かないことがあります。基準の名称だけで判断せず、資料品質と事実関係を先に整えるのが実務的です。
交渉で見るべき比較軸
比較は『総額』だけでなく、慰謝料・休業損害・逸失利益・過失割合調整後の受取額まで分解して行うべきです。慰謝料が高く見えても、他費目が過小評価されていれば全体として不利になる場合があります。
実務での使い分け方
示談提示を受けた時点では、まず計算の土台を確認します。通院期間・実通院日数・症状固定時期・過失割合・既往歴の取り扱いを把握し、どの基準に近い評価かを見ます。次に、追加資料で上積み可能な論点を整理し、交渉方針を決めます。
早期解決を優先するか、時間をかけて適正化を図るかは、症状の残存リスク、就労状況、生活資金の状況で変わります。基準論だけでなく、生活再建の観点を含めて意思決定することが重要です。
具体例・計算例
同条件(通院4か月・実通院45日)での概算比較: 自賠責 387,000円、任意保険 387,000〜503,100円、弁護士基準(通院4か月) 670,000円。
金額差は資料整備と交渉戦略で最終結果が変わるため、計算値は入口として扱います。
事故後にやるべきこと — 7つの鉄則
よくある質問(FAQ)
Q. 任意保険基準は公開されていますか?
A. 詳細な内部基準は公開されないことが多く、実務では提示額と算定根拠の説明から推定します。
Q. 弁護士に依頼すれば必ず弁護士基準になりますか?
A. 自動的にはなりません。事実関係と証拠の質、過失割合、争点の有無に応じて到達水準が決まります。
Q. 自賠責基準で示談してしまった後にやり直せますか?
A. 原則として難しいです。示談前に内容を確認し、必要なら専門家へ相談するのが安全です。